みずりゅの自由帳

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この面倒な納品成果物の作成は、見積金額に含まれていますか?

お仕事ネタ。

とある改修作業案件の納品作業をした時に感じたモヤモヤを整理してみたくて、文章化してみました。

背景:

先日、とある改修作業の案件を担当しました。
その案件のお客様は馴染み客ではあるのですが、残念ながら、金額面では少額の部類になります。*1
個人的には旨味が少ないため、自分自身は担当になるのは遠慮したいなぁ、と思うことの多いお客様でした。
こう書くと何を偉そうに、と思われる方もいらっしゃるとは思います。
が、見積もりを出すと大体は金額オーバー。最終的には偉い人の判断で"お値引き"して受注している状況です。
率直な話、やる事は多いが担当しても評価が上がらない案件。旨み成分はほとんどなし、なんですよね。*2

とはいうものの、サラリーマンでありますから、やりますよね。*3

案件の構成要員としては、ユーザ調整+PJ管理担当の上司と、ソース&ドキュメント改修作業担当の私の2名。

どんな作業が必要かを上司と確認して、大まかにスケジュールを計画。
そして、昔ながらのソースを、昔ながらの手法で改修して、昔ながらの方法でテストする。
手間な部分はありましたが、期限内に余裕を持った状態で改修作業は完了。
改修内容の社内レビューや本番へのリリース作業などは、レビューア&調整役の上司が多忙のため少しスケジュールは遅れたものの、なんとか期限には間に合いました。

本題:

ここからが本題。

事前に調整した分担では、納品物作成は上司の担当。
改修したソース、テスト仕様書+エビデンスという名の画面ハードコピー達、そして改修内容へ修正された各種ドキュメント。これら一式を揃えて、共有ファイルサーバに格納。
上司に「成果物、ここに置いときますねー」と連絡し、晴れてこの業務からは解放される。
...と思っていたのですが、ここで上司から一言。

「悪いんだけど、"納品物"の書類も作っておいてくれない」

どういうことかと聞いてみると、自分がまとめた成果物以外にも"納品"をするために作成する書類があるとのこと。
普段は上司が作成しているらしいのですが、今回は上司が忙しくてその作業に時間が避けないのでお願いしたい、とのことでした。

私も長くSIerとして働いていますので、納品物として"製本した紙書類"が必要な案件にもかかわってきています。書類をバインダーに挟んでバインダーの表紙/背表紙を作って、納品CDを焼いて、そのCDに案件名の書かれたテプラのシールを貼って、などの作業も十分に体験済みです。
今回もそんな内容の作業であると思い、気軽に引き受けました。

さて、改めて"納品物"として作るものをチェックしていきます。
納品書、所定のラベルをつけた納品物の格納されたCD/DVD、発注案件名が書かれた表紙/背表紙をつけたバインダーに対してドキュメントを印刷して製本した冊子。
また、印刷対象物のドキュメントとしては、修正した仕様書、結果の書かれたテスト仕様書、修正箇所一覧...

「ふんふんふん... ん? んんー??」

チェックをしていた中で、見慣れないキーワードが出てきました。
いや、正確には、昔はよくみたが最近は見ることが少なかった、キーワードです。

修正箇所一覧

文字通り、ソースコードで修正した箇所を一覧にした資料ですね。
端的に言えば、修正前後のソースのdiffをとって、その差分はどんな修正をしたかを説明する資料です。
これには良い思い出はありません。
昔々、ソースコードを印刷し、修正箇所にマーカーで色をつけて提出する、といった事がありました。まさかこのことでは、と一抹の不安を持って以前の納品物を確認してみます。

...コードの差分をWinDiffで比較した画像が貼り付けてありました。

「良かった、紙じゃない...」そんな安堵の気持ちになりました。

が、多少マシとはいえ、WinDiff画面の貼り付けも苦行です。
微かな望みをかけて、上司に聞いてみます。

私「修正変更一覧、省略しても大丈夫ですか?」
上司「あー。以前も辞めようとしたんだけど、先方からOKが出なかったんだよね。もう、決まり事は変更しないっていう"そういう体質"みたい」

ここの連中には刻の流れというものがないのか」とクワトロ大尉の台詞*4が思わず出ちゃいました。

さて、必要ならば作らないといけません。
コードの修正箇所は十数箇所存在したので、差分の表示されたWinDiffの画面ハードコピーを粛々と撮影。その後、撮影した差分のイメージをExcelに貼り付けて、修正内容をオートシェイプの吹き出しに書き込んでいきます。

...辛かったです。

作業しながら、「事前に作るのわかっていれば、もう少し心に余裕もあったんですけどね」と上司にイヤミを言ってしまうぐらいには、辛かったです。
作りながら思っちゃうんですよね。「誰が必要なんだろう、この資料」って。

是非はありますが、『「修正箇所の検証もしましたので、問題ありません!」ってお客さんが内部の上司を説得するための資料』な位置付けなんですかねー。バグが出てくるまでは、全くみられることのなさそうな資料ではありますが。

ふと、この修正箇所一覧を作る作業、今回の案件の見積金額に含まれているか気になって、上司に聞いてみました。
結果、含まれていませんでした。
厳密には、"納品作業"という枠で工数の確保はされているのですが、納品作業の工数は適当な規模(1人日程度)で設定されていました。

あと、そもそもの話で言えば、(存在価値の有無はさておき、)今回急遽作った「修正変更一覧」は、納品作業ってくくりで対応する作業ではなかったよなぁ、と考えています。
また同時に、小規模案件なら面倒くさがらずに自分の目で納品物の確認をしておくべきだったなあと反省しました。

まとめ:

大きな手間ではないんだけど、非常に雑多な作業というのはあります。
今回の私のケースでいえば、「修正変更一覧」が該当しました。
作成に対してのモチベーションは一旦置いといて、事前に作成するということがわかっていれば、時間的余裕はあったので、そこまでストレスにはならなかったのかもしれません。
しかし、実際には納品日ギリギリになって資料作成依頼を受けました。

改修作業をするという観点だけに立つと、納品物作成作業というのは頭から抜けやすいです。
とはいえ、納品して初めてお金がもらえるわけです。
なので、納品物には何が必要か、の意識は大事です。意識して確認していれば防げたでしょう。
しかし、注文書に書いてある、だけでは見落としが起きやすいこともまた事実。
となれば、WBSあたりに出てきてくれると、見落としも少なくなるでしょう。
そして、WBSに載るということは、当然見積もりに載っていることでしょう。


自戒の意味で、この言葉で締めたいと思います。

この面倒な納品成果物の作成は、見積金額に含まれていますか?

*1:よくある、一定金額を超えると案件発注のルートが変わるため、その部門の決済だけで済む金額に抑えられて発注されるってやつです

*2:会社としては、少額とは言え売上になるので、断る選択肢がないんですが...

*3:やらざるをえない...

*4:アニメ「機動戦士Zガンダム」にて、数年前に所属していたアクシズ軍(ジオンの残党軍)と再開した時に言ったセリフ