みずりゅの自由帳

主に参加したイベントやソフトウェア技術/開発について記録しています

エンジニアの声が届かないのは、誰かがサボっているからなのか?

備忘。
特にコレといった結論は出ていないのですが、そのまま記憶の彼方で埃を被せておくのも勿体無いので、ブログに書き記しておこうと思いました。

※内容には、若干のフェイクが入っています。

概要

私は現在、SIを生業とする中小企業に勤めています。社員数は100名前後です。

先日、自社の取締役と話す機会がありました。
その時に出た話題の一つに、「部下から『我々の声が届いていない』と言われることがある。君はどう思うか?」と意見を求められました。

その意見に対して、私は一つ質問をしました。
「たとえば、どういう声があがってきているのですか?」と。

この質問に対しての取締役の答えは以下でした。
「そもそも、声があがってきている認識がない」

その回答を聞いた私は、もう一つ確認を入れました。
「もしかして、計画書を持参して取締役や経営陣のところに来ていない、とかそういう観点で話をされていますか?」
回答は「Yes」でした。

この回答で、なんとなくギャップが見えてきました。

推察と考察

私の勤めている会社は中小とはいえ、会社の中では役職による階層ができています。 話をシンプルにするために階層を整理すれば、「一般社員」「管理職」「経営陣」の3階層です。

そして、その階層間の"区別"を顕著に表しているものがあります。
椅子」と「呼称」です。
階層によって、椅子のグレードが変わっています。一般社員に「肘掛け椅子」は支給されないし、空いているからと座っていると、なんだかんだとお小言を言われます。
呼称についても、役職者には「役職」をつけて呼ぶ/メールの宛先にも役職をつける、を促されます。上司を「さん」で呼ぶ/メールで書こうものなら、役職チェックおじさん達からの指導が入ってきます。

上記のことから、一般社員から経営陣に何か意見を持っていく、というのは基本的には起こり得ません。
いくら経営陣が気軽に「提案してくれ」といっても、組織内の空気はそれを許していません。
それに、経営陣も実際に持ってきたとしたら、おそらくは持ってきた社員の上司を呼び出してお小言を伝えるパターンになると想像できます。実際にそうなるかまではわかりませんが、一般社員がそう思ってしまう可能性の高い環境であるが問題だと思っています。

このような背景がある中で、それでも「我々の声が届いていない」と言う声が上がっているには、一般社員は一般社員なりに何かアクションを起こしていると考えられます。経営陣へ直接乗り込まない方法で。
となると、以下の2点が思いつきます。

  1. 月間報告書で提案をする
  2. 自分の上長へ提案をする

前者の、月間報告書で提案をする、について。
弊社では、その月の業務内容や問題点/改善点などを「月間報告書」と言う形で提出しています。この月間報告書は、上長のみならず経営陣や社長まで閲覧されてから承認される仕組みになっています。
つまり、この月間報告書に記述するのが、一番敷居が低く"提案する"/"声を上げる"のに適していると言えます。 何より、そういう声を拾うために、この月間報告書が用意されていると一般社員は思っているわけです。

後者の、自分の上長へ提案する、について。
前者の月間報告書よりも敷居は高いですが、あまり接点のない経営陣よりも接点のある上長の方が伝えやすでしょう。
上長から管理職へエスカレーション、さらに管理職から経営陣にエスカレーションしてくれれば、と考えるのではないでしょうか。

しかし、これら2点は、そうやすやすとは実現しません。
なぜなら、この段階では実現性が見えなかったり、どのように進めるかも不明瞭なものである事が大多数だからです。

例えば、「JIRA/Confluenceを導入して日々の業務での知見を全社で共有したい」、と声を挙げたとしましょう。
これ自体は素晴らしい事です。
ただし、導入する際にかかる費用、導入後にかかる費用、メンテナンスは誰が行う、どのように情報を移管していく、何よりどの程度の効果を見込めるか、などなどと懸念事項が出てきます。
ですが、これらの内容が提案した一般社員から最初から出てくることはないでしょう。提出を求められて、初めて整理し始めるのではないでしょうか。

このように、実現性の見えない内容を出されても経営陣は判断できません。結果、意見は出ているのはわかっているが、却下してしまうと言う行動を取ります。そして、その却下理由を具体的に提示をしたりしません。伝えることが不要だと思っているのか、伝えることでギャップが生まれると思っているのかまではわかりません。もしかしたら、単純に忙しいから手をつけていない、だけなのかもしれません。
ただ、伝えられていないからこそ提案した側からは「声が届いていない」と思われるのではないか、と考えます。

そんな「一般社員」と「経営陣」の溝を埋めるのが「管理職」です。 理想を言えば、「管理職が一般社員の声を拾い上げてサポートし、そして経営陣に届ける」が管理職に求められることなのでしょう。 何より、管理職は経営陣とも定期的にやりとりが発生しますから、どうすれば経営陣が動くかの把握はしているでしょう。 しかし、これもなかなか実現しません。

なぜなら、この階層の中では彼ら「管理職」がおそらく一番忙しい、であろうと考えられるからです。

下からの突き上げ上からの圧力、そして仕事でのプレッシャー。 そんな中で、部下から出てきた提案にどこまで労力を避けるでしょうか。 もちろん、この提案が真に良いものであると判断できれば尽力もするでしょう。
しかし、残念ながら「仕組み」でフォローができる環境がなければ、管理職個々人の気持ち/気合で補うことになります。 ここを補え切れないからこそ、やはり「我々の声が届いていない」になっていると考えられます。

結局のところ、三者三様で、どこかの層が歩み寄らないといけないんだろうな、と言う結論になりました。

  • 一般社員:間接的に声をあげているが、改善策への具体的方法について深掘りがされているわけではない。言われれば対応するかもしれないが、言われていないのでやらないし、何より面倒なことになるのなら声もあげない
  • 管理職:一般社員と経営陣を繋ぐと言う意味では、ここが動くのが一番望ましい。しかし、ここの層がおそらく一番忙しく、かつ一番厳しい状況に置かれる立場にある。
  • 経営陣:一般社員からあがる声に実現性まで求めている、そこまで揃った状態で上がってくる「声」を求めている。

まとめ

正直なところ、それぞれの立場になれば、どの層の人達の見解もわかります。

しかし、だからと言って互いが自己の立場を主張しているだけでは、何も変わらないでしょう。

かつての日本では、"下の人達"が"上の人達"に配慮(もしくは忖度)して、事を成してきた事例が多かったでしょう。その時代は、終身雇用や忠誠心などの背景もあり、下の人達にも何かしらメリットがありました。

しかし、時代は少しずつ変わり、終身雇用は崩壊してきています。また、上からの切り捨てに我慢しなければならない時代でもなくなりました。そうなると、一概に"下の人達"から"上の人達"への配慮を促すのも、成功要因ではない可能性が高いです。

むしろ、そんな労力を割くくらいなら、労力を必要としない組織へ転職していく人達も出てくるでしょう。 そして、転職していく人達は残って会社を牽引していって欲しい人達だったりするオチもあるでしょう。 長期的に見て、会社の損失になっていくわけです。

その考えが根底にあるならば、動くべきは経営陣なのかな、という考察もできます。 本気度合いも伝わりますしね。

まぁ、自分は管理職や経営陣の層になったことがないので、なんとも言えないなーてのが正直なところですが。

ちなみに、取締役からの質問に対しては、上述の「推察と考察」や「まとめ」の内容をそのままお伝えしました。取締役は、ちょっと困った顔をしながら、別の話題にシフトをしていきました。

※冒頭に書いた通り、特にオチはありません。